農家インタビュー

●生産している主な農作物

ミニトマト、みずな、小松菜、ほうれんそう

●概要

▼所在地等
大阪府岸和田市内畑町
キノシタファーム公式サイト

▼栽培について
バッグ栽培という栽培方法で、年間を通じて糖度8以上のミニトマトを安定供給。

▼出荷・販売先
飲食店、阪急百貨店、スーパー(オークワ・サンエー)、地元直売所(愛彩ランド、道の駅 葉菜の森、ららぽーと和泉)など


通年で味のこだわりをもって作っている農家さんは、他にはほぼいない


実家は葉物野菜の農家なんですが、僕はあるミニトマトと出会ったことで、脱サラして新規就農のようなかたちで就農し、以来10年ミニトマトを栽培しています。
大阪は、地域柄、売り先に困ることがない地域で、作れば売れていくということもあり、通年で味のこだわりをもって作っているミニトマトの農家さんは、他にはほぼいません。

きっかけは“トマト嫌い”がおいしいトマトと出会ったこと

これは本当の話なのですが、実は僕はトマト嫌い。
ハンバーグレストランでハンバーグの添え物で出てくるのがミニトマトで、僕は絶対食べない。
何回か食べたことはありますが、本当においしくない。
「うわ~青臭いわ~すっぱいわ~」と思いました。
それがずっと、僕にとってのミニトマトのイメージだったんです。

でも、10年前にあるミニトマトと出会って、初めて「おいしい!」と思ったんです。
「ミニトマトってこんなにおいしんだ!」と感動しました。
自分もこんなミニトマトを作りたいと思いました。
それがミニトマト農家になったきっかけです。



バッグ栽培で実現する、おいしい味のバランス


酸味と甘みとうまみのバランスがとれたミニトマト

初めておいしいミニトマトと出会って、生産者に話を聞いたところ、バッグ栽培という方法をとっていました。
普通のトマト栽培の場合は、畝を立ててそこに水をどっさり流して、3~4日水やらないのですが、バッグ栽培は、1株1株袋に入った状態で、こまめな灌水ができ、おいしいミニトマトができます。
晴れて暑い日は、1日5回くらい水をやります。
少量多灌水というやり方で、ペン状の管がバッグごとに刺さっていて、何時になったら何秒出して、という管理をするんです。

生産をしていく中で、ミニトマトのおいしさというのは、糖度、それに酸味と甘みとアミノ酸のうまみ、それらのバランスなんだなとわかりました。
そこに行きつくんです。


理想的なのはなかなかとれません。
年に数回だけ「本当にこれおいしいな~!」という理想的なのがとれるのですが、毎日収穫していても、年に数回だけ。

ポイントは、食べたときに酸味がちょっときて、そのあとに甘みがきて、最後にうまみが残る。
このバランスってめっちゃ難しい!
決め手は気候です。
冬を超えてきたトマトの木で、寒さに耐え、ようやく5月にしっかり温度が乗ってきて、でも夜温はまだけっこう低くて、という気候条件のトマトは育つのに時間もかかっているし、微妙な調整もできているから、おいしくなります。


あえて、通年供給


バッグ栽培によって、通年で供給ができるというのも利点です。
通年で糖度8以上、ということを基準にしているのですが、「通年で」というのが1つの強みです。

通年できるというのは、さきほど話した水のやり方の工夫です。
普通の栽培方法でもできないことはないのですが、7月8月を収穫しても、収量が落ちて、労力と合わない。
だから敢えてする必要はないということで、通年供給する農家がいない。
だからこそ通年供給でしかも糖度8以上ということを基準にし、ウリにしています。
逆に言うと、「この時期ないです」と言ってしまったら、強みが1つ減るということになります。


お客さんの直接の声を大事に


店頭に立つ意味

直売所が近くに2軒あるので(※)、収穫の多い5月6月7月は、店頭に立って販売します。
販売だけが目的ではなく、お客さんが実際うちのトマトをどう思ってるのかということを知るとても大事な機会です。
他のミニトマトのがおいしいという声がもし多いようなら、うちの方法を変えるのか、ミニトマトから別のものに変えるのか、トマトを中玉に変えたりといった何かしらの手を打たないといけない。
それを知ることができて、手を打って、よりおいしいミニトマトにしていくのです。

※2軒の直売所
道の駅 愛彩ランド   葉菜の森(株)


キロ単価8.5倍のミニトマト


ミニトマトの大阪相場は、5月6月だとキロ単価200円くらいで、直売所でも変わらない。
でもうちは、直売所で1,700円くらいです。
それでも今のところ、お客さんが買ってくださっている。
お客さんに、うちのミニトマトを他とは違う部類として考えてもらえているのかなと思います。


独自ブランドを立ち上げた理由


うちのミニトマトは、「キノシタファームのミニトマト」という名称で販売している場合と、独自ブランドの「Amamade(アマメイド)」として販売している場合があります。

うちに来て働いて、のちに独立したい若者がいたときのことを考えたのです。
独立した若者が「キノシタファームのミニトマト」を販売することはできないし、したいと思わないですよね。
でも、生産者の名前に由来しないブランド名なら、積極的に売っていきたいと思えるのではないかと。
それが独自ブランドの「アマメイド」を立ち上げた理由です。

働いていた人が独立するということは、トマト農家として育てたのに戦力なくなるというイメージが強いのですが、ブランドを作って一緒にブランドを盛り上げていこうということにすれば、それは、うちで働き続けても独立しても、どちらでも、同じ仲間としてやっていけるということになります。


※この写真は、「キノシタファームのブログ」からお借りし掲載しております。

生産者の「顔が見える」だけでいいのか?

同じトマトでも、近辺かそうでないかで「顔が見える」の意味が違う

生産者の顔が見えるということは、お客さんにとって安心できる大事なことだと思います。
だから僕も、「キノシタファームのミニトマト」には僕の顔写真のシールを貼っています。
大阪のこの近辺で顔写真シールを使って販売していると、お客さんはいつか僕と会う可能性があります。
だから顔写真シールには「顔の見える」という意味あいが強く、すごく効果があるんですね

でも例えば熊本で栽培されたトマトが大阪で売っていて、袋に顔写真入っていたらどう?
「これ、誰?」って話になりますよね。
「顔が見える」とは言っても、ただ見えてるだけやん、という話。

だったら単なる顔写真を貼るのではなく、かわいいブランドロゴが貼られている方が、女性はよっぽど手に取りやすくなるので、特に遠方なら「アマメイド」のがいいのです。
顔写真を貼るのは、僕がしっかりと近辺で販売できたり納品できたり、そういうつながりが持てる人に対してやることです。


※この写真は、「キノシタファームのブログ」からお借りし掲載しております。


規模拡大を考え始めて出た答え


規模を拡大せずに続けていくのは、僕が見れる範囲に限られます。
ひとりの範囲なので近辺だけの狭い範囲です。
それ以上の範囲の、もっと多くの人にうちのミニトマトを味わってもらいたいとなると、僕が見れない範囲になります。

範囲を拡大するということは規模を拡大することです。
拡大しようと思い始めたときに「キノシタファームのミニトマト」でいいのかな?と自問自答しました。
僕が見れない範囲でトマトが動くので、じゃあ僕の顔写真は必要ないという結論になったんです。

それが正しいかはわからない。
まだまだ写真のがいいよという人もいますが、自分が出した答えで進んでいこうと思っています。


ミニトマトの観光農園をやる、という目標

規模拡大も目標ですが、観光農園をやるというのも目標にあります。
観光農園をやろうと思ったら、トイレと駐車場が必要ですが、幸い道の駅がすぐそこにあるので
そういう意味で、ここだったらできるなと。

おおさかNo-1グランプリ」(※)でやると発表したので、発表したからにはやらなければ。
準備と作業がなかなか間に合わなくて当初予定よりも時間がかかっていますが、この秋(2019年)、10月11月に、土日限定で開催予定です。

大阪農業の成長産業化に向けて、経営能力の高い農業経営者を育成することを目的として、若手農業者の経営強化プラン(農業経営を強化・拡大するための戦略立案と、その具体策をまとめたもの)のコンテストを開催し、優秀者を表彰する、大阪府の制度。
平成28年度、キノシタファームは準グランプリを受賞。


キノシタファームのミニトマトが使われているイタリアンレストラン「ポッツォーリ」(大阪市中央区)にて


木下さんから夢農人へのメッセージ


とてもいい活動だと思います!
もっともっと積極的に広げていってください!


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